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イギリス ロイヤルベビー誕生を控え出生率も上昇(全4回更新)

Episode1 イギリスの出産事情

~産んだら6時間で退院が理想!?~

こんにちは。ロンドン在住のフリーランス・ライター/フォトグラファー、平川さやかです。ロンドンは、人口8百万人以上の大都市ではありますが、公園や緑がとても多いところが魅力。私たちの住む北ロンドンのウェストハムステッド という地区も、大きな森林公園が近くにあり、季節の移り変わりを感じさせてくれます。

学生時代、交換留学に訪れたロンドンですが、帰国してカメラマンの仕事に就き、その後の独立をきっかけに戻って来ました。今では、イギリス人の夫と5歳の息子、日本生まれの猫とにぎやかに暮らしています。

イギリスの出産事情は、実にびっくりの連続でした。今思えば、笑い話として語り継げるストックとなっていますが、当事者の時はドキドキ。これを読めばきっと日本の出産に安心できるはず!?

「まだまだ産まれないから帰って!」

昨夜から陣痛が始まり、うんうんと一晩うなって迎えた朝、「さあ産む準備は万端」と向かった産院。ちらりと診てくれた助産婦さんに言われたのです。「これはまだまだ産まれないわ。今日は予定日の妊婦さんも多いし、この状態でベッドを割くわけにはいかないの。待合室で待っているより、家に帰った方がリラックスできていいでしょう?」

イギリスにはNHSと呼ばれる国民保健サービスがあり、出産を含むほとんどの医療が無料で受けられるのですが、そのサービスは決して行き届いたものではありません。国からの予算引き締めを受け、常に最低限の人数で運営される病院では、「産む直前に来て、産まれたら6時間で退院」というのが理想とされるケース。長々と居てもらったのでは、つぎつぎ来院する妊婦さんを“こなせない”ということでしょうか。私のまわりのママたちの中でも、「帰らされた派」は半数以上でした。激痛と不安の中、病院にいられないというのは衝撃的でした。

現在では、「病院に来るのは、45秒から1分続く陣痛が5分間隔になったとき」といった指針が設けられているようですし、病院に電話をして陣痛の状況などを話し、助産婦さんから「もう来ても大丈夫」と言われてから向かう場合も多いようです。

出産プラン

そんなNHSではありますが、「どんな出産をしたい?」という部分では、個人の意見を尊重してくれる傾向にあります。出産前にバースプランとよばれるチェック表に記載していくのですが、その中には(どこで出産を希望しますか?家/助産院/病院)、(出産時の姿勢は?立って/座って/膝をついて/しゃがんで/横になって)、(赤ちゃんが産まれたら?すぐにだっこしたい/産湯を使わせてからだっこしたい/その他)といった項目を含む、たくさんの質問があり、これにそって病院でも準備をしてくれるのです。

ロンドンは多民族シティですので、出産の常識も人それぞれ。そういった背景からくるものなのかもしれません。そして、この出産プランの中で特に大切なのが、痛みに関するもの。大きくは自然分娩と、麻酔を使った無痛分娩を選択することができます。自然分娩の中でも、水中出産はとても人気があります。自然分娩でも、痛みをやわらげるため、オイルマッサージ、針、笑気ガスなどを使用することもあります。

「あなたがお母さんなんだから、あなたが一番良く分かるはずよ」

イギリスで出産を体験してみて、一番大きく感じたのは、ここでは誰もが「妊娠も出産も、とても自然なことであって、病気ではない」という価値観を持っているのだということ。だから、病院は新米お母さんと赤ちゃんの面倒を見る場所ではなく、出産を助けるための場所とされています。

陣痛がとても長く続いたとき、おもわず助産婦さんに「後どのくらいですか?」と尋ねました。「あなたがお母さんなんだから、あなたが一番良く分かるはずよ。」と、彼女は答えました。その時とても強く「わたしがお母さんなのだから、お母さんとしての大仕事をしっかりやりとげなければ!」と思い、猛烈に力がわいたのを覚えています。

2013年4月19日更新

プロフィール

平川さやか

フリーライター/フォトグラファー/メディアコーディネーター。

1979 年、北海道札幌市生まれ。横浜山下町、写真スタジオ勤務を経て、2004年独立。2005年より英国へ移住し、ファッション、カルチャー、インテリア、旅、キッズの分野を中心に、コーディネート、取材、撮影、執筆活動に携わる。テレビ番組の撮影コーディネーションや同行通訳も致します。現在、夫と息子(虎男・5歳)と、白黒の猫(ニコン・9歳)と共にロンドン在住。

取材・撮影は体力と根性で、インタビューには人なつっこさと笑顔で。誠実に人と向かい合う取材を心がけています。

ウェブサイト:www.sayakahirakawa.com

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