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マレーシア 多様性溢れる子育てしやすい国(全4回更新)

Episode4 マレーシアの教育制度

~多言語国家が抱える課題~

2020年までに先進国の仲間入りを果たすという大きな国家目標を掲げて躍動中のマレーシア。

この国にとっても、次世代の国民をどう育成していくかは国家成長の鍵となる、最重要課題であることは変わりません。ただ、日本にはないこの国ならではの大きな課題があります。それは多民族、多言語社会特有の言語教育の課題です。

英語ができれば困らない!

オレンジジュースのパッケージ。くるっと回せば、英語からマレー語デザインに。あらゆる商品に上手に二ヶ国語が表示されています。

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マレーシアというと、最近日本では「マレーシア留学」が度々注目を集めているようで、英語教育のイメージが強いかもしれませんが、国語はマレー語、国教はイスラム教と定められています。しかし、都市部であれば、マレー語がまるでわからなくても、英語さえできれば困ることはない、というのもまた事実。商品表示、看板、目につく至るものはすべてマレー語と英語の二か国語表示、ビジネスは英語で行われ、ショッピングやタクシーも英語で事足ります。民族が異なるマレーシア人同士が英語で会話する姿もなんら珍しくはない光景です。新聞やテレビは、マレー語、英語のほか、中国語、タミル語版もあります。

オレンジジュースのパッケージ。くるっと回せば、英語からマレー語デザインに。あらゆる商品に上手に二ヶ国語が表示されています。

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揺れる国家の言語教育

習い事(中国語クラス)の風景。意外に学業が厳しいマレーシアの小学校。就学前から習い事や塾に通う子も多い。

習い事(中国語クラス)の風景。意外に学業が厳しいマレーシアの小学校。就学前から習い事や塾に通う子も多い。

宗教、母語、生活習慣―。異なる民族がマレーシアというひとつの国で暮らしていく上で、国民統合の手段として、「マレー語教育」は必須であるとされています。

一方で、「母語での教育」の選択は、各民族のアイデンティティを尊重する、個人に与えられた権利であり、また「英語教育」はグローバル社会で国家としての競争力を維持、向上するために必要不可欠。

この三つの言語教育の狭間で、国家の教育方針は常に揺れています。さらに、人口の6割を占めるマレー系を、教育、就職面で優遇することで低所得層を底上げし、民族間格差を是正しようとする「ブミプトラ政策(マレー人優遇制度)」も、マレーシアの教育問題に大きな影響を与えています。

ここでマレーシアの教育システムを簡単にご紹介しましょう。マレーシアの政府系小学校は、それぞれの民族母語で教える、マレー系小学校、中国系小学校、インド系小学校の3種類。母語が主体とはいえ、どの学校でもマレー語は必須科目となっています。

中等教育以降はマレー系学校に統一され、国立大学入学枠を巡ってもブミプトラ政策の影響が強く、マレー語重視、マレー人優遇の教育制度が展開されています。

にもかかわらず、非マレー系は、母語の尊重や将来を見据え、私立進学や海外留学までを視野に含めた上で、小学校ではそれぞれの母語の学校を選ぶケースが多いようです。特に中国系の小学校は勉強に力を入れており、英語教育も重視とあって、マレー系やインド系、その他外国人の希望者も増えており、人気を集めています。

習い事(中国語クラス)の風景。意外に学業が厳しいマレーシアの小学校。就学前から習い事や塾に通う子も多い。

習い事(中国語クラス)の風景。意外に学業が厳しいマレーシアの小学校。就学前から習い事や塾に通う子も多い。

迫られる親の選択:何語で育てる!?

ショッピングセンターでのある日の子ども向けイベント。いろんな子がいる、それがマレーシア。

ショッピングセンターでのある日の子ども向けイベント。いろんな子がいる、それがマレーシア。

マレー語と英語の二言語が重視された時代もあれば、マレー語重視、英語重視・・・と、歴史とともに、度々方向転換を繰り返してきたマレーシアの教育制度。

最近では、英語で授業が行われていた算数と理科が、新しい指導要領でマレー語での授業に変更になり、これでは英語力が低下し国際競争力が落ちると、議論の的になっています。

政府の方針によって翻弄されるのはいつも子ども達。マレーシアで子どもを育てる親たちは、何語で教育を受けさせるのか、第二言語としてどの言語を重視するのか、無関心ではいられない状況にあります。どのタイプの小学校に入れたいかで、幼稚園の選択も変わってきますので、親の言語教育方針は比較的早期に直面する問題です。

私立小学校にまで目を向ければ、英語で教育を受けることができる外国人のためのインターナショナルスクールに加え、ローカルの私立学校にインター部が併設、開校されるパターンも増えてきており、選択の幅もぐんぐん広がっています。

多民族を巡る複雑な課題を抱えるものの、結果的に多様な選択肢が存在するマレーシアの教育環境。日本のみなさんの目にはどう映りますか!?

ショッピングセンターでのある日の子ども向けイベント。いろんな子がいる、それがマレーシア。

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2013年7月19日更新

プロフィール

わだまきこ

トランスレーター/ライター

1977年静岡県生まれ。早稲田大学大学院(教育学)修了後、大手渉外法律事務所の秘書、翻訳会社勤務を経て、第一子出産を機にフリーランスで翻訳、執筆活動をスタート。2012年夏より夫の転勤に伴い、長男(しゅんたろう 3歳)、愛犬(はな6歳)と共に、マレーシア・クアラルンプール在住。マレーシア国立博物館日本語ボランティアガイド。現在、第二子妊娠中で現地にて出産予定。

ウェブサイト:http://mediahiroba.com/?p=1882

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